ワールドカップロシア大会の日本代表の初戦は
サランスクでのコロンビア戦。

のちに「サランスクの奇跡」と呼ばれた試合です。

この日私は、FIFAからのオファーを受け、
サランスクで獅子舞のパフォーマンスを行いました。

会場は、スタジアムにほど近いFAN FEST。
期間中の全試合のパブリックビューイングのほか
様々なライブが、全開催地で催されています。

日本に関係するイベントを行う、という趣旨でお声かけいただきました。

このワールドカップ期間中に
FIFA公認でパフォーマンスをした日本人は
私一人だと聞いています。

実際、各会場にも日本人のアーティストやパフォーマーの方は
お見掛けしませんでした。
(客席にはけっこういらっしゃったようですが)

一サポーターとして、一日本人として
たいへん光栄な話です。

ですが、当日の出演にこぎつけるまでが大変でした。

「出演決定」の連絡以降、詳細の連絡まるでなし。

知らされたのは「6月19日の13時開演」だけ。

集合の時間も場所も連絡なし。
モスクワから600km。
最寄りの駅・空港からの送迎もなし。

「とにかく自力で来い」ということらしいのです。

交通手段を調べ、チケットを手配し、日本を出発。
したのですが、まだ連絡なし。

モスクワに到着したのが2日前の17日。

ようやく担当の方と連絡が付く。
それも現地でsimを買って携帯にショートメールしたから。
 
「あなたからのメールは全部迷惑メールになっていた」と。
ほんまかいな。

そして「12時半にゲートに来て」。

事前の打ち合わせもなく、開始30分前でほんとに大丈夫なの?
ロシア人ってそういうものなのか、と思いつつも
心配性な私は、不安要素をつぶすべく交渉。

せめて1時間前にして。

「なら11時半でいいよ」

あっさりOK。

当日6時前に到着する夜行列車でサランスク入り。
会場付近を下見し、準備OK。

夜行列車で仲良くなった方とサランスク市内を散策。
市内を占領するのはコロンビア人。

「スリーゼロ!(3-0)」
「ファイヴゼロ!(5-0)」
「セブンゼロ!(7-0)」

日本人を見かけると、指で予想スコアを示しながら
余裕しゃくしゃくのコロンビア人。
まさかあんな展開が待っているとは思いもしなかったでしょうね。

そして時間の少し前に指定されたゲートへ。

〇番ゲートに着いた、と担当さんに連絡。

「そこじゃない。×番だ」

なんじゃそりゃ。
急に変えないで。

近くにいた係員に聞く。
が、英語が通じない。
翻訳アプリで会話。

「それはあっちだ」
指示されたほうに行く。

また、聞く。
「そんなゲート知らない」
「〇番じゃないか?」

もと来た道を走って戻る。
獅子頭を抱えながら。

そんなことを繰り返すこと1時間。

×番は一般には知らされていないゲートだった、とようやく知る。
ボランティアスタッフが知らないのも当然か。

会場に入れたのは出番の15分前。
あわててセッティング。

サウンドチェックをお願いします、と要望。

すると後方から爆音が。

「メインステージでライブやるから(でん舎の)音流せなくなった」
「ステージ上は使わず、下でやってくれ」

そもそも、どこでやるかも聞いていなかった。
ステージでやる予定だったのね。
それすら知らないし。

なに、この雑な進行。

いざ本番。
30分の持ち時間、敷地内をひたすら練り歩く。
お客さん大喜び。
写真待ちの行列ができる。

件の担当さん、ご満悦。
「すごくよかったから、またやらない?」
「試合の後、時間ある?」

急遽、追加公演決定。

「時間はたっぷりあるから、好きに使っていいよ」
持ち時間の指定なし。

途中、地元ロシア戦(対エジプト戦)のパブリックビューイング開始。

吠えまくるロシア人。
酔って暴れるロシア人。
圧勝でかなりご機嫌のロシア人御一行様。

「いまはやめたほうがいいね」

結局、中断をはさんで前後1時間ずつ。

発表によると5万人集まった会場で、
ひたすら獅子舞で練り歩くというお仕事でした。

Saransk FIFA FANFEST